推しのグッズが発売された瞬間、迷わず全種類ポチる。特典が変わるたびに追加購入する。これを「ちゃんと推している証拠」だと思っている人、意外と多いんじゃないでしょうか。でも実際に何年も同じ推しを応援し続けている人ほど、買い方には妙に落ち着きがあります。今回は推し活の出費を、どう見直せばいいのかを整理してみます。
「新作は即決済」は正解なのか、というよくある誤解
結論から言うと、発売と同時に全部買うことが「正しい推し方」ではありません。むしろ何を買うかを先に決めておく人のほうが、長く推し活を続けられています。
この誤解が生まれる理由は単純で、SNSのタイムラインには「買った人」しか流れてこないからです。買わなかった人は投稿しません。結果として、タイムライン上では「みんな買っている」ように見えてしまいます。実際には同じ空間に、グッズを絞っている人も、今回は見送った人も、同じ数だけいます。ただ発言しないだけです。
たとえば新曲のCDが5形態で出たとします。特典の写真違い、ミュージックビデオの違い、握手会の応募券。全部集めると2万円を超えることも珍しくありません。これを毎回のリリースでやると、年間の推し活予算は簡単に膨らみます。ある月は無理して買って、翌月は生活費を削る。こういうサイクルに入っている人を何人も見てきました。
ただし例外もあります。コレクション自体が趣味として成立している人や、収入に十分な余裕がある人にとっては、全部買うことが不自然な出費ではありません。問題は「本当は苦しいのに、買わないと推していないことになる気がして買う」という状態のほうです。ここは人によって事情がまったく違うので、一律に「全部買うのはやめましょう」とは言えません。
実際に長く推せている人がやっていること
長く推し活を続けている人の多くは、あらかじめ「買うもの」と「買わないもの」を分けています。全部を我慢するのではなく、優先順位をつけているだけです。
仕組みはシンプルです。月ごと、あるいは年間の推し活予算をざっくり決める。そのうえで、円盤・写真集のような「形に残るもの」を優先し、ランダム封入のグッズや缶バッジのような「増え続けるもの」は回数を決めて買う。こういう線引きを自分の中に持っている人は、リリースが続いても慌てません。
具体的な場面を挙げます。あるファンは年間の推し活予算を12万円と決めていました。月1万円です。円盤は必ず買う。グッズは月の予算内で収まる範囲だけ買う。オーバーしそうな月は、翌月の予算を前借りするのではなく、その月はあきらめる。このルールのおかげで、3年経っても推し活を苦にせず続けられていました。
一方で予算を決めずに「その都度買う」を続けていた別のファンは、半年でカード払いが厳しくなり、結局その推しから距離を置くことになりました。これは推す気持ちが弱かったからではありません。仕組みを持たずに走り続けたからです。長く推すためには、実は「買わない判断」を先に決めておくことが効いてきます。
とはいえ予算を決めても、限定モノやコラボ商品が急に出ると心が揺れます。ここで多少の予算オーバーを許すか許さないかは、正直、人それぞれで正解はありません。
なぜ「全部買う」が正しく見えてしまうのか
これは推し活そのものの構造に理由があります。応援の気持ちを形にできる手段が、基本的に「お金を使うこと」に集中しているからです。
ライブに毎回行く、グッズを買う、円盤を買う。これらはすべて金銭が絡みます。逆に言えば、お金を使わずに応援の気持ちを表す手段があまり用意されていません。SNSで感想を書く、布教する、といった無償の応援もありますが、これは「本人にどう届いているか」が見えにくい。だからこそ「買った」という行動のほうが、応援している実感を持ちやすいわけです。
加えて、同担同士の空気も影響します。ライブ会場やSNSで「今回は見送りました」と言いにくい雰囲気は、たしかにあります。買っている人が発言力を持ちやすい場では、買わない選択が肩身の狭いものに感じられることがあります。これは推し活に限らず、趣味のコミュニティ全般に起きる現象です。
具体的には、限定特典に応募券がついているケースが分かりやすい例です。特典会に参加したい気持ちが強いほど、必要枚数のCDを買わざるを得ない構造になります。ここで「全部買うのが当然」という空気が生まれるのは、応募券という仕組み自体が、複数買いを前提に設計されているからです。誤解というより、構造がそうさせている面があります。
ここは正直、線引きが難しいところです。応募券のために複数枚買う行為を「浪費」と切り捨てるのは簡単ですが、本人にとっては直接会える機会そのものに価値があるわけで、外から損得だけで評価するのは違う気がします。
予算を見直すときの具体的な手順
結論として、月単位より年単位で考えたほうが見直しやすくなります。理由は、推し活の出費がイベントによって波があるからです。
まず年間のスケジュールを洗い出します。ライブ、円盤発売、ファンクラブ更新、誕生日イベント。だいたい何月に何があるか、推しごとに把握できるはずです。次に、それぞれにどのくらい使うかを仮に割り振ります。ここで大事なのは、去年実際にいくら使ったかを振り返ることです。感覚ではなく、レシートや明細を見て実数を出す。多くの人はここで「思ったより使っていた」ことに気づきます。
次のステップは優先順位づけです。すべてのイベントに全力を出すのではなく、今年は「ライブ遠征を優先してグッズは最低限にする」「逆に円盤は全形態集めるけれどライブは近場のみにする」といったふうに、年ごとにテーマを決めるやり方があります。これなら毎回悩まずに判断できます。
具体例を挙げると、年収や生活費との兼ね合いで推し活予算を手取りの5%程度に収めている人がいます。実際、この割合は人によって大きく違うので、目安として絶対視するものではありません。ただ「上限を先に決めてから配分する」という順番自体は、誰にでも使える考え方です。
迷いやすいのは、予算内に収まっていても「本当にこれで満足しているか」という感覚のずれです。予算管理がうまくいっていても、グッズが増えすぎて置き場に困る、といった別の問題が出てくることもあります。お金の見直しと、モノの見直しは、実は別の作業です。
見直しても迷う場面、線引きが難しいところ
推し活の出費は、最終的にどこまでいっても「気持ちの問題」に戻ってきます。ここが家計簿の他の項目と大きく違うところです。
たとえば同じ1万円のグッズでも、それを「無駄遣い」と感じる人もいれば「今年一番の投資」と感じる人もいます。仕組みとしての予算管理はできても、その予算の中身が本人の納得感と一致しているかどうかは、また別の話です。予算内に収まっているからといって、本当に必要なものだけを買えているとは限りません。
具体的な場面として、限定コラボカフェの特典が「1グループ1点まで」だったケースを考えてみます。友人と一緒に行けば複数点手に入りますが、一人で行けば1点だけ。ここで「友人を誘って複数点確保する」ことを効率的な推し活と見るか、本来の楽しみ方から外れると見るかは、人によって判断が分かれます。正解はありません。
また、体調やお金に余裕がない時期に「今回は見送る」と決めた場合、それを後悔しないかどうかも人それぞれです。見送ったことで気持ちが冷めてしまう人もいれば、逆に一度距離を置いたことで長く続けられるようになった人もいます。
実務的な判断としては、まず年単位の予算枠を作り、その中で優先順位をつける。これは誰にでもできる仕組みです。ただし、その枠の中身をどう埋めるかは、最後は自分の納得感で決めるしかありません。ここだけは、他人の基準をそのまま持ってきても意味がないところです。


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